メキシコ最大の港マンサニージョ。ここに先月100年目を迎えた港湾労働組合があります。港に壊滅的な被害をもたらした大地震と大津波の試練を乗り越えて、今では港湾オペレーションに欠かせない存在になっています。
毎月彼らにトヨタ生産方式や問題解決研修を行うのが私の楽しみになっています。なぜなら、私が教えるより彼らから学ばせていただくボリュームが半端ないからです。たとえば数トン~何十トンもの貨物を大型船の複雑な船倉から陸揚げする作業。一瞬の心の隙が即座に命を奪います。作業者間のコミュニケーションの高い精度が何時間も息つく暇なく求められます。そんな難しい作業を、天候、波、照度、船ごとに異なる船上クレーンの操作性のクセなどをすべて調整して一点の狂いもなく安全に同じスピードで荷役作業をやってのける。これらの工程を標準化する過程で、他の業種にない角度の視点がどんどん盛り込まれていくのです。
瞬時の分析と判断が求められる現場を長く経験された方々の英知は、ときに机で仕事ばかりしている人たちを裕に凌ぎます。標準化を通してそうした英知を活かした問題解決を進め、彼らのすごい仕事がより高く評価され、彼らがより誇り高く豊かな生活を送れるようにお手伝いさせていただけることが、私のパッションの源にもなっています。