コロナ禍ではありますが、先日音楽を聴きに出かけました。美しいピアノの音色と歌声にどっぷり浸りながらも、真面目な性格が災いし、音楽と仕事の標準化の関係について考察してしまいました。
すばらしい演奏をしてくれたピアニストの前には、楽譜が置かれていました。楽譜というツールは紀元前からあったと言われています。これがあるからこそ、どんなに遠い国・どんなに昔に作られた曲でも、再現性の高い演奏ができるのです。演奏者の数が多いオーケストラでも、楽譜というツールがあるからこそ演奏者間・指揮者間で複雑なコミュニケーションを図ることができ、さまざまなアレンジが可能になります。
ある工場の現場リーダーから、面白い話を聞いたことがあります。「工場の異常は音でもわかる」と。さまざまな音が入り混じっているものの、それらは常に同じタイミングで連鎖していて、機械の作動・ヒトの作業・搬送車の動き、すべての音がオーケストラのように一定のリズムと音の重なりで聞こえている。これが一つでもズレて聞こえる時は、たいてい異常が起こっているのだそうです。
実は、工場にも楽譜があります。それは、ヒト・機械・材料・製品を搬送する車などの動きを決める「標準書」。楽譜がない音楽と同じように、標準書がないオペレーションは再現性もありません(あったとしても膨大な時間がかかります)。どんなにすばらしい生産計画も、砂上の楼閣となるでしょう。逆に、オペレーションがしっかり標準化されていると、お客様の要望に合わせたアレンジ、つまりサービスや生産計画の幅が広がるというわけです。
標準書は、変化とともにどんどん進化していきます。地味なイメージのある標準書ですが、音楽の楽譜に負けない魅力につまったツールなのです。